マスク生活も、既に1年を超え、正直without マスクで外を歩けるのも、まだ見えない現状。鼻は覆われていますが、毎朝香水は欠かしません。誰に香るわけでもなく、自分のために。だからなのか、香りの選び方とつけ方が変わりました。今まではウッド系のマスキュリンなタイプを好んでいましたが、今は、もっと複雑な香りに心が動きます。つけ方も、手首やデコルテから、髪の毛やうなじに。「マスクなし」で近くに存在する人と自分のために――。
今愛用しているのは、「パルファン ビブリオテカ バベル」。「せかほし」でも取材させてもらった、ジュリアン・ベデル氏がオーナー調香師を務めるフエギア1833のもの。ジュリアンが生まれ育ったアルゼンチンの作家、ホルヘ・ルイス・ボルヘスが著した「バベルの図書館」からインスパイアされたそう。
ヒノキの書棚。
濃厚なインク。
革張りの椅子。
そんな遠い昔の記憶の断片が、香りの奥に潜んでいるような。この香りを、髪をかきわけて遠目からふわっとひと噴き。さらに、指に吹き付けてから、耳の裏からうなじをしっとりさせて。
きっとこれは、私のとって、朝のセレモニー。ぐいっと急にアクセルを、というよりは、気負いなく「仕事という世界」に出かけるイメージ。なんかこのくらいがちょうど良いのです。
「どこの香りですか?」マスクをつけているのに、ふとした瞬間に聞かれるのも、とても不思議です。
もちろんたまに、同じくフエギア1833の「NAOKO OKUSA」をつけることも。これは、友人でもあるジュリアンが、私のために作ってくれた香り。
さらに言うと、どんな香水の前にも、必ず「ムスカロ フェロ ジェイ」を子宮のあたりに忘れずに。このつけ方はジュリアンに直接教えてもらいました。フェロモンと類似した分子構造をもつ「香りのない分子」を採用。強く香る、というより、その人の体温や体臭を引き出し、「オリジナルのフェロモン」になる、とのこと。強い香りで異性を惹きつける、というよりも、自分が自分の魅力に気づき、深く感謝する、みたいなイメージでしょうか。ジュリアンの知人は、この香りをまとったことで「パートナーができた」のは、うそのような本当の話。
こんなふうに必ず香りはレイヤーして。
今日も私が私であるために。