Fashion信じるおしゃれ
二月某日、「STAFF START(スタッフスタート)」というサービスを展開している、株式会社バニッシュ・スタンダードにて、大草が講師としてお招きいただき、講習会を行いました! スタッフスタートは、アパレルをはじめとする店舗スタッフがコーディネートや商品レビュー、動画などをECサイト上に簡単に投稿できるサービスです。今回の講習会は、そのサービスを活用している現役のアパレル販売員向けということで、コーディネートのノウハウをはじめ、それがどのようにしてできあがったのか、大草が考える「センスの磨き方」を約一時間に渡ってお伝えしました。
講習会の内容は、販売員だけでなく、普段の私たちの洋服の選びのヒントにもなるため、ぜひみなさんにもお届けしたく、まとめ記事にしてご紹介します。
ボリューム満点の1時間は、1回の記事には収まりきらなかったので、3回に分けてお届け。コーディネートに悩む人も、そうでない人も、大草流「センスを『磨く』Tips 15」をぜひお楽しみください!
まずは、基礎となる“私のスタイルの見つけ方編”。ファッションを考えることは、自分と向き合うこと。どんな自分になりたいか、どんな自分が心地いいのか、まずはそこから……
現在、肩書きを「スタイリングディレクター」としている大草ですが、さまざまなコンテンツのスタイリングや編集、コンサルティングにメディアの主宰、本の出版など、その活動は多岐に渡ります。そんな大草が28年続ける「編集」という仕事は、その名の通り、情報を「編んで」「集める」というもの。では、その情報たちは一体どのように編んで集められたか、そこから紐解いていきます。
Chapter.1
私のスタイルの見つけ方
よく「自分のスタイルがわからない」「スタイルを一生探し続けている」という声を耳にします。「自分のスタイル、自分の軸がない限り、ファッションの想いや価値観やセンスを、人には伝えられない」と、大草は言います。では、どうやって自分のスタイルを見つけて、そのセンスを磨いていったらいいのでしょうか。
TIPS 01
好きな女性像をピックアップする
自分と似ていなくても構いません。昔の人でも、外国の人でもいいのです。自分の中で具体的に思い浮かべることが大事。
大草が理想とする人物はキャサリン・ヘップバーン。アカデミー賞を4回受賞した名女優です。何故、彼女が好きかと言うと、少しエラの張った骨っぽい顔立ち、贅肉のない少し男性っぽい筋っぽい身体つき。そして、ブラックドレスとチノパンといった、テイストの違う両方のファッション軸を持っていた女性だから。ドレスアップも、カジュアルダウンも上手、そんな彼女のファッションセンスが好きなのだそう。ファッションだけでなく、身体つきや生き方など、はっきりと思い浮かべることで自分の目指す方向性、目指す女性像が見えてきます。
そして、もう一人がヘイリー・ビーバー。実は、キャサリン・ヘップバーンと共通点がある彼女。少しエラが張っていて、バレエをずっとやっていたからか、筋っぽい身体つきは、時代は違えども、共通しています。
筋っぽいと言えば、ケイト・モスや、オードリー・ヘップバーンも挙げられますが、彼女たちは少しコンパクトで、タイニーなのだそう。比べて、前出の二人は肩幅がしっかりとしています。そんな風に、ディテールも含めて、具体的に思い浮かべることが大事だと大草は言います。
TIPS 02
自分の年表を作る
自分の年表作り、やったことがない人の方が多いのではないでしょうか。でも、実はこれがとても大事なのだそう。
「これってオシャレに関係ある?」と思うかもしれませんが、とても関係性が深いもの。今日着ている洋服は、自分の人生のレイヤード。一つとして自分以外のものは入っていません。そこで、振り返ってみると、自分がどういうものが好きで、何故こうなったのかが、客観的に見えてきます。特に女性は年代で身体つきがどんどん変わっていきます。少しオシャレに悩むタイミングで振り返ると、それがクリアになってくるはずです。
ここで、著書『大草直子のSTYLING&IDEA 10年後も使える「おしゃれの結論」』に書かれている大草の年表を参照して話は進みます。
《幼少期》
大草は、トラッドな両親に育てられたといいます。年表には、ネイビーのポロシャツにブルーのスカートといった、そっくりなコーディネートで写る大草と大草の母、チェックのプリーツスカートをはいた大草3姉妹。そして、6年間ネイビーと白の制服で過ごした小学校時代の写真が並びます。大草の根底はベーシックであり、トラッドだと言います。
《学生時代》
アメリカに留学中の16歳の時、そこにはオレンジのスウェットを着た大草の写真が。木村拓哉さんと同い年の大草は、渋カジ、アメカジがファッションの大きなキーワードだとも。そこからは、大学でラクロス部に所属したこともあり、Tシャツとジャージといったスポーティーなスタイルになっていったそう。
その後、21歳の大学時代、後に就職することになる雑誌『ヴァンテーヌ』へ、強い憧れを抱いていたそう。この頃は今よりもずいぶん大人っぽい格好をしていて、当時のトレンドを感じさせます。シックで知性のあるオシャレ、それがこの時のキーワードだったと振り返ります。
《20代後半》
ガラリと変わったのが27歳。憧れの雑誌『ヴァンテーヌ』を辞めて、南米にダンス留学をします。そこには赤いシマロンのパンツをはく姿や、ドミニカで出会ったマダムたちと写る写真があり、赤や青といった鮮やかな服を着た大草の姿が。ここへ来て急に、ネイビー、ブラウン、白、ベージュというベーシックな色味の中に、赤や黄色、そして「セクシー」というキーワードが入ってきます。ラテンの女っぽさやセクシーさが、自分の中に芽生えたタイミングだと言います。
自分のファッションをどう体系づければいいかと悩んだ時や迷った時に、この年表が役立つのだそう。
TIPS 03
規則正しい生活
センスを見つける、磨く時、実は「暮らし」が大きく関わってきます。暮らしと着る服をオシャレにするのではなく、「整える」ことがとても大事。
規則正しい生活、と言いながら、深酒、痛飲をして朝起きられないこともありますが(笑)、基本的には早寝早起きを心がけていると大草は言います。一見ファッションと関係ないように思えますが、暮らしを整えることが、オシャレを整え、安定させることに繋がるのです。
大草自身、学生時代のラクロス、ダンス以外は特に運動をしていなかったのですが、43歳から始めたヨガによって、自分らしく心も体型も整ってきたそう。昨日入ったパンツが今日少しきつい、など女性ならではの揺らぎは多少あるけれど、ヨガを始める前に比べてオシャレも随分安定したと言います。
TIPS 04
空間を心地いいものにする
自分がいる空間を心地いいものにするということは、センスを磨くことにおいて、とても重要なのだそう。高価なものを揃える必要はなく、座っているソファーのマテリアルはどんなものがいいだろう、レザーライクなものがいいのか、アルミっぽいものが好きなのか、そんなことを自分なりに考え、集めてコーディーネートをしていくことが大事だと言います。
夜寝る前に見た景色が次の1日を作ると言われています。全部はきれいにできなくても、ベッドから見える範囲だけでも整えて寝る、といった小さなことが大切なのだそう。
TIPS 05
旅やレストランで「感じる」
「どういうところでセンスを磨くのですか?」と聞かれることが多い大草。実は、レストランや旅先からインスピレーションを受けることが多いのだとか。旅先のレストランの床の木目や、カーペットとフロアのバランス、お皿とナプキンの色合い、そんなところからインスパイアリングされるので、写真を撮ったりSNSにあげることも大事だけれど、何より「見て」「感じる」ことが大事。きれいだな、新しいな、素敵だな、と感じることが重要です。
TIPS 06
コーディネートノートをつける
ここに並べられたノートは、大草の友人である、ELLEファッションディレクター龍淵絵美さんのコーディネートノート。大草自身も付けていたコーディネートノート。どんなものかというと、一週間の服を一度紙に書くのだそう。天気予報や自身のスケジュールを見て、まとめて書き出す。そして、一日が終わると○×を付けていく。「自分が心地よく過ごせた」「嬉しい声をかけられた」そんな時に○を付けておくと、自分の心地いいコーディネートと、そうではないコーディネートが一目瞭然になります。
そして、一ヶ月後振り返ると、「このアイテムをよく使ったな」とか「プラダのジャケットのところに絶対○が付いているな」等、可視化されます。今なら写真でもいいかもしれませんが、手を動かすことで脳が動くといわれているので、書いて残しておくのもおすすめ。
TIPS 07
自分の着こなしを写真で振り返る
SNSをやっている、やっていないは関係なく、家族やパートナー、友人に不意の瞬間をを撮ってもらってください。とにかく「不意」の瞬間というのが大事。鏡の前だと、どうしてもポーズととってしまうので、普段人から見られている姿とは大きく違います。ポーズをとるのではなく、写真に意識が向いていないところを撮ること。後ろ姿、横からなどきれいに見せようとしていないところを撮ってもらってください。そうすれば気づくことがたくさんあるはずです。
いかがでしたか? Chapter.1は、自らがもともと持っているセンスを、どうやって掘り出して、探して、磨いていくかの、具体的な方法をお伝えしました。 理想の女性像を思い浮かべる、年表を作る、などはすぐにでも始められそうですね。ぜひ参考にしてみてください。
次回は、4月23日(日)にテクニック編を公開予定。お楽しみに♡