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Chapter.1、Chapter.2とお送りしてきました、センスを「磨く」Tips 15。今回で、いよいよラストになります。
気分で洋服を選ぶことはもちろん大事。それでうまくいけば一番いいけれど、何かしっくりこないと悩んだことは、みなさん、きっと一度や二度ではないはず! 大草自身が長年の経験で培ってきた、技の数々を惜しみなく公開します。
TIPS 10
アイテム数の少ないものから
コーディネートする
靴以外まで合わせて、玄関で靴を合わせた時に「なんか違う!」と何度も着替えた記憶ってありませんか? 大草自身そのような経験がたくさんあるそう。それはなぜかというと、アイテムの数が靴の方が圧倒的に少ないから。一番数が多いのはトップスではないでしょうか。おそらく多くの方が、トップス→ボトムス→アウター→バッグ、そして最後に靴、の順で数が少なくなっていくと思います。
ということは、アイテム数が少ないものから逆算してコーディネートをすれば良いのです。人によってはボトムスかもしれないし、冬ならコートかもしれない。大草の場合、雨の日は、傘やレインシューズから決めるそう。
TIPS 11
苦手な色は顔から遠く
普段、着慣れていないし、ベーシックカラーが多いから……と鮮やかな色を嫌煙する人はとても多いのだとか。きっと、どう取り入れたらいいのかわからないのが本音。そんな、苦手な色、着慣れない色、華やかな色は、なるべく顔から離してあげると収まりがいいのだそう。
女性はメイクもします。例えばグリーンのシャツをはいた時、リップの色はどうしたらいいのか、そんな壁にぶつかるかもしれません。そんな時は、顔まわりは自分がいつも着ている、心地のいい色を置いて。イエベ、ブルベ、といったカテゴライズで、色の苦手意識を持っている方もいると思いますが、顔から離すことで格段に取り入れやすくなります。
TIPS 12
全身のアイテムのプライスに緩急をつける
ワードローブを揃える際、ワンシーズンのバジェット(予算)が20万円だとすると、2万円×10点ではなく、8万円と3千円と……といったように緩急をつけるのがおすすめ。高いものにその人の印象は引っ張られるので、2万円のジャケットに2万円のパンツであれば、2万円の人になる。でも、8万円のジャケットに3千円のパンツを合わせれば、8万円の人に。そんな風に緩急をつけて、いいものを際立たせるのもテクニックの一つです。
TIPS 13
「好き」を「似合う」に変換させる技を持つ
好きな色、好きなブランド、好きなアイテムが、似合わなくなってしまったり、しっくりこなくなってしまった、とがっかりすることもよくあります。ですが、それらを変換させる技さえ持っておけば安心。
例えば、かっちりしたシャツが苦手になってしまったのであれば、オーバーサイズのシャツを風通し良く着る、デニムが苦手になったのなら、日本人の体型に合うパンツを選んで、トップスをインしたりアウトにしたりして、印象を操作するという手も。ツイードのジャケットが最近老けて見える、そんな時はゴールドのアクセサリーをシルバーに変える。こんな風に「好き」を「似合う」に変換する方法はたくさんある、と大草は言います。
TIPS 14
自分だけの色名をもつ
今回は、販売員向けの講習ということもあり、接客時の言葉選びについても、お伝えしました。普段インスタライブやイベントで、たくさんの方とお話をさせていただく機会の多い大草。そんな大草が考える言葉の選び方について、ご紹介します。
言葉をたくさん知っている、表現する言葉のバリエーションがあるということは、人と人の繋がりを、そして、生活をも豊にしてくれます。なかでも「色名」はすごく大事。会場の参加者の中にオレンジの服を着られている人がいらっしゃったのですが、それを「オレンジ」という方もいれば「ブラウン」と表現する方もいます。その方は「フレッシュなオレンジ」と表現されていました。そうすると、イメージが湧きやすくなるのです。ほかにも、大草は、参加者のマスクの色を「デザートローズ」と表現。
ベージュは食べ物に例えるとイメージがしやすく、「ココア」「オートミール」「ティーラテ」「ロイヤルミルクティー」など。「ココアはブラウンだけれど赤みがある……」「ロイヤルミルクティだと白が勝ってるのかな……」といったイメージが膨らみます。
日本の色名も素敵なものが多く、「鈍色」は深い鼠色。「茜色」は黒っぽい赤など。大草は本から色名を知ったそうで、宮尾登美子さんの「天璋院篤姫」や「序の舞」など、着物を表現する言葉が素晴らしく、そこから多くを学んだそう。洋服は森瑤子さんの本から。ご自身がいろんな色の洋服を着られていたので、本からたくさんの色名を学んだと言います。
色の名前を覚えるでもいいし、自分なりに作るでもいい。表現のバリエーションの一つとして捉えて。
TIPS 15
素材の特徴、お手入れ方法を知る
素材によって「特性」と「お手入れ方法」が変わるということ、これを知っておくことも大事だと、大草は言います。着る素材のイメージは、その人の印象そのもの。例えば、リネンを着ている人は、かっこ良くてラフで、リッチな大人の女性。シルクを着ている人は神秘的で女っぽい人、のように。そして、どんな人になりたいかを考えるためにも、お手入れの方法も知っておいた方がいいのだそう。
【リネン】
特性:リネンは吸湿性が優れ、丈夫。そして放電性があるので、静電気が気になる冬にも、実は向いています。日本ではあまり馴染みがありませんが、ヨーロッパの人たちはカシミヤのニットと合わせて冬に着たりするんだそう。
お手入れ:脱水をしすぎるとシワになるので、脱水の時間は短くするのがおすすめです。速乾性が高いので、脱水せずにそのまま干すだけでも、シワがつかずきれいに乾かせます。日光による変色を避けるため、陰干しにしましょう。
【シルク】
特性:シルクは光沢感があり、吸湿性、保温性、保湿性があります。そしてUVカット効果が高く、着ていると日焼けしにくい、といった特徴があります。着ていると、上品で繊細なイメージを持たれるのではないでしょうか。
お手入れ:手洗いが基本です。押し洗い、振り洗い程度におさめ、生地に負担がかかるもみ洗いは避けましょう。洗剤は、シルク用のものか、デリケート衣類用の弱酸性のものを。普通の洗剤は、弱アルカリ性洗剤が多く、タンパク質が主成分のシルクに使うと劣化の原因に。短時間でサッと洗い、サッとすすぐのがコツ。長く水につけておくのもNGです。
【カシミヤ】
特性:カシミヤは一目でそれと分かるほど、リッチな風合いが特徴。ラグジュアリーな印象があり、柔らかく滑らか。少々値は張りますが、呼吸してくれる素材なので、インナーの生地としても向いています。
お手入れ:とにかくよくご質問をいただくのがカシミヤニットの洗濯方法。カシミヤは獣毛なのでそこまで汚れはつきません。動物の毛は、汚れがつきにくいように皮脂などで守られているのです。大草は基本的にホームクリーニングをしているそう。1週間に1回、10日に1回くらいの頻度で着たものは、ワンシーズンに2回くらいの洗濯で十分なのだとか。もちろん、着た後にはきちんとハンガーにかけて水分を飛ばし、できるだけ風通しのいいところにかけておくことは大事。ドライクリーニングは油で洗うので、匂いが残ったり、汗などの水溶性の汚れは取れないことも。
洗剤は、デリケートな衣類用のほか、自分が使っているシャンプーとコンディショナーでもいいのだそう。少しずつ混ぜた溶液で優しく洗い、平置きの陰干しで伸びないように干します。そうすればふわふわに。
【ポリエステル】
特性:シルクとは違う光沢がありますが、最近はそれに近いものも多く出回っています。発色も良く鮮やかなものが多い印象です。化繊は扱いやすいところが魅力なので、スポーツウエアなどにも多用されています。
お手入れ:ポリエステルは丈夫で、洗ってもヘタりません。日光による変色も少ないので扱いやすさは抜群。乾きやすくシワにもなりにくいので、忙しい人にはありがたい素材です。
お手入れのことまでを知っておくと、洋服を購入した後、どのような付き合い方をすればいいか、イメージがしやすいと思います。どれくらいの頻度でお洗濯をすればいいのか、どんなホームケアができるのか。クリーニングの方がいいのかなど。気に入って買ったものだからこそ、少しでも長く、いい状態で楽しみたいですね。
Q & A
講演会の参加者から
大草への質問
講演会の最後には、参加者から大草への質問を募集しました。その中から、抜粋してお届けします。
Q .言葉はどのように学んでいるか?
A.自分ならどうか、置き換えてみる
自分が言われて嫌な言葉は避け、これを言われていい気持ちになるかを想像します。痩せている人も「痩せている」と言われるのを嫌がることが多いです。たとえば、「シャープな体型」と言い換えるなど、常に、自分が言われたらどう思うかを考える、これにつきます。私は、本から言葉を学ぶことが多いですね。
Q.トレンドとの付き合い方は?
A.トレンドは2年待つ。そして取り入れるのは3割
TPOにもよりますが、自分の中では、トレンド3:ベーシック7にしています。そして、トレンドは2年待つようにしています。色の話と同じく、顔の周りよりもボトムや靴といった顔から遠いところから取り入れるのがいいかなとも思います。年齢を重ねると、ベーシックだけではスタイルが作りにくくなってくるので、スピード感が大事になってきます。そのスピード感を作ってくれるのが、流行だったりもするので、3:7の割合は常に頭に置いています。
最後まで読んでいただき、ありがとうございました。今回は現役のアパレル販売員向けの講習からまとめ記事を作りましたが、私たちの普段の生活にも役立つTipsがいくつかあったのではないでしょうか。
なんとなくで決めていたコーディネートも視点を変えて見直してみると、新たな気づきがあるかもしれません。これからどんどん暖かくなり、新しい装いがしたくなる季節。みなさんの毎日のおしゃれの参考にしていただけたら嬉しいです。
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