両忘

「両忘（りょうぼう）」という言葉があります。二つのことを忘れる、という意味です。

「二つのこと」が何か、気になりますよね。実は、「二つのこと」には何を入れてもいいんです。善と悪、内と外、美と醜、是と非、愛と憎……私たちは日々、もう数え切れないほどの二項対立を頭に浮かべて、あれかこれかと二者択一の判断を下しながら生きています。それを忘れろ、というんです。

何かにつけて「両」に分けて比較するそのような考え方は、必ず対立を生み、差別を生みます。言葉というのは「両」に分ける性質がありますから、人間として生きている限りは逃れられないことかもしれませんが、だからこそそれを自覚し「両忘」を心がけることから、軽やかな生き方が始まるのです。

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