悪をなさず、善をなし、自らの心を浄めること

悪をなさず、善をなし、自らの心を浄めること。
そんな、シンプルなことほど、難しいもの。

その昔、中国に白居易という才人がいました。あるとき杭州の知事に赴任した白居易は、この地の僧侶で評判の高い道林禅師のもとを訪ね、仏教に関して質問をします。
「仏教の真髄とは、何ですか?」

禅師は答えます。
「悪をなさず、善をなし、自らの心を浄めること。これが仏教である」

学識ある名僧のわりに、あまりにも簡単な答えです。
白居易は禅師が真剣に答えてくれていないと憤慨したのでしょう。
「そんなことは三歳の子どもだって知っていることだ」
と禅師を非難します。

すると禅師は
「三歳の子どもでも知っていることだが、八〇歳の老人でも実践できないことだ」
と切り返し、白居易を唸らせたそうです。

シンプルなことほど、難しいもの。禅師は教えてくれています。

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