八九成

禅には「八九成」という言葉があります。

十割に対して八割、九割を目指そう、ということ。十割の完璧を目指そうとすると、かえってうまくいかないからです。

生きづらさを抱えてお寺を訪ねてくる人は、少なからず「完璧主義」に苦しんでいるように思います。人間誰しも、波がありますよね。無理していつも十割を目指してしまうと、どこかで折れてしまいます。

その点、掃除というのは一見、チリ一つない完璧な状態を目指すもののように見えて、完璧主義を手放す練習になっています。庭の落ち葉を掃いていれば、そのことはすぐにわかりますね。完璧に掃除したと思った瞬間、また落ち葉が舞って積もり始めますから。

焦らず、掃除しながら「八九成」の練習をしていきましょう。

Profile

松本紹圭
東京神谷町・光明寺の僧侶。
東京大学を卒業後、僧侶になり、その後、インドでMBAを取得するといった、異色の経歴を持つ。最新刊『こころを磨くSOJIの習慣』（ディスカバートゥエンティワン）ほか、著書も多数。
朝、お寺に集まり、お経を読み、境内を掃除し、対話をする”テンプルモーニング”も人気。開催日の詳細はツイッター（@shoukeim）にてチェックを。