Life style今日も一日おつかれさま

【お坊さんにお悩み相談】引きこもりの娘の未来が心配。受け入れるにはどうすれば?

何気ない毎日の中でも、仕事や家族、子育て、人間関係など、なんだかモヤモヤしてしまう「お悩み」は湧いてくるもの。そこで、今回は「今日も一日おつかれさま」のコーナーで、ご執筆いただいている僧侶のみなさまに、お悩みを解決するためのヒントをいただきます。

事前にご応募いただいたお悩みに、3人の僧侶がお答え。3週に渡ってお届けします。お一人目は、お寺カフェの店長や、お寺や福祉施設などで傾聴活動を行う 木原祐健(きはら ゆうけん)さん。

先行き不安なこの時代に生きる私たち。みんな同じ悩みではないけれど、ひととき、心をほぐすきっかけになれば幸いです。


〜 お悩み 〜

娘の今後を考えると、不安で2人で死にたくなります。どうすれば、今のこの状況を受け入れることができますか。

二人の息子は夫と同じ医師になり、末っ子の娘も医療関係の大学に進みました。が、大学を2ヶ月で退学し、以来3年間自宅に居ます。
中学時代にいじめにあい、その頃から人が怖い様です。 高校ではよいお友達に恵まれ、もう大丈夫だと思っていたのですが、大学の人の多さに戸惑い、退学してしまいました。
メンタルクリニックに通っていますが、全くの引きこもりではなく、自分の用事がある時は出かけたりもします。コロナ前は、コンサートやイベントにも。親戚の家に行ったりもします。
ただ、もう大学や、専門学校には行きたくない。バイトもしたくないと言います。仲の良かったお友達も、最近は会っていません。

家事は手伝ってくれます。本当は、娘が元気でいてくれる事だけで満足しなければいけないのでしょうが、欲を申せば外で働いて社会と関わりを持ち、友人とご飯に行ったり、旅行に行ったりして欲しいです。
娘の今後を考えると、不安で2人で死にたくなります。どうすれば、今のこの状況を受け入れる事ができますか。

ハピネスさん 57歳



〜 お悩み解決のヒント〜

ひきこもりの状態からの回復には3つの「間」が必要。

ハピネスさん、ご相談をお聞かせ頂きありがとうございます。
つぶさに寄せて頂いたご様子を読みながら、ご不安に少しでも心を寄せることができればと考えております。

「2人で死にたくなります」、これからを考えると、本当にお苦しいでしょうね…同時に、ハピネスさんの文面からは娘さんの優しいお人柄が伝わってきます。家事を手伝ってくれる。ご親戚のところにも行ける。良いお友だちに恵まれてきた。それはご家族が育んだ、娘さんの得がたい美点です。
「欲を申せば…」そうですよね。お子さんの幸せは親御さんの切なる願いだと思います。ただ、それがかなうには、少し時間が必要かもしれません。
実は、私にも軽度のひきこもり経験があります。大学を卒業して2年ほど、家をなかなか出られない時期がありました。仲が良かった友達とも話が合わなくなりました。病院に通い、友人のお坊さんがいるお寺に通う中で症状は回復していきましたが、当時は働くことにも学ぶことにも強い不安がありました。

ひきこもり状態からの回復には3つの「間」が必要だとされています。ご自分が安心していられる「空間」や「時間」、同じ悩みを打ち明けられる「仲間」。娘さんにとっての大事な「間」が、これから少しずつ増えていくといいですね。

ハピネスさんご自身もどうぞ、身体と心を休めてください。また、ご事情が許せば家から外に出る時間を持ち、お好きなことを楽しんでいただければと思います。趣味を楽しむのもよし、ひきこもり当事者の家族向けの「親の会」も助けになるかもしれません。どこにも行くところがないと思ったら、お近くの素敵なお寺でお過ごしになるのはいかがでしょう?(ついでながら、光明寺のテラスにはどなたでも入れますし、私もときどきおります)



お答えいただいたのは…

木原祐健
(きはら ゆうけん)
東京神谷町・光明寺の僧侶。2005年に光明寺のお寺カフェ「神谷町オープンテラス」の立ち上げに加わり、ご縁に導かれ僧侶となる。お寺カフェの「店長」として来訪者のおもてなしを担当し、お寺や福祉施設などで傾聴活動を行う。趣味はカフェ巡り。
著書に『神谷町オープンテラスのおもてなしお寺スイーツ12ヶ月』(河出書房新社)など。


木原さんを含めた、僧侶のみなさんによるリレー連載『今日も一日おつかれさま』は、毎週、月曜日・木曜日・日曜日の22:00に更新しています。一日の終わりに読むと、肩の荷がふっと降り、スイッチをオフにできます。こちらも併せて、ぜひご覧ください。

※『今日も一日おつかれさま』はプレミアム会員限定記事になります。
※プレミアム会員については、こちらを参照ください。