渋柿の楽しみ

ある日のお寺の台所。お寺の皆さんがせっせと柿を剥いていました。ざるの上にはずっしり重い立派な柿。

聞くと、お知り合いから段ボールいっぱいの柿が送られてきたそうです。なんとすべて渋柿。

ちょっと驚き、「それはお気の毒に……」と返しそうになったところ、お寺の娘さんから「だから楽しみなの！」と、いきいきとした言葉が返ってきました。これから干し柿を作るそうです。

渋柿を残念なものと思ってしまった自分を恥じつつ、新鮮な一言に頼もしさを感じました。

いま、都心のお寺の軒下で干し柿が作られています。

Profile

木原祐健
（きはら ゆうけん）
東京神谷町・光明寺の僧侶。2005年に光明寺のお寺カフェ「神谷町オープンテラス」の立ち上げに加わり、ご縁に導かれ僧侶となる。お寺カフェの「店長」として来訪者のおもてなしを担当し、お寺や福祉施設などで傾聴活動を行う。趣味はカフェ巡り。著書に『神谷町オープンテラスのおもてなしお寺スイーツ12ヶ月』（河出書房新社）など。