小さな青い梅

5月のある日、親戚の家を訪ねました。東京から電車で2時間。猫の額ほどの庭がついた木造の小さな平屋に、かつては祖父母が暮らし、今は叔父夫婦が暮らしています。

叔母の淹れたお茶をいただき、少しの世間話。帰りに叔父は庭で採れた梅の実をくれました。今年はこれしか生らなかったよ、と差し出された梅の実は、どれも小さく、まだ青いものばかりでした。

「こんなに早いうちに採ることはないのに」と言いかけて、思い当たりました。遠くから来る私のために採ってくれたのでしょう。

今年は、小さな梅で何か保存食を拵えてみることにします。うまくできたら、もう一度顔を見に行くきっかけができそうです。

Profile

木原祐健
（きはら ゆうけん）
東京神谷町・光明寺の僧侶。2005年に光明寺のお寺カフェ「神谷町オープンテラス」の立ち上げに加わり、ご縁に導かれ僧侶となる。お寺カフェの「店長」として来訪者のおもてなしを担当し、お寺や福祉施設などで傾聴活動を行う。趣味はカフェ巡り。著書に『神谷町オープンテラスのおもてなしお寺スイーツ12ヶ月』（河出書房新社）など。