自然と惹きつけられる人には、「スタイル」がある。個性、こだわり、らしさや軸とも言い換えられる「スタイル」とは、一体、どんな風に育まれ、その佇まいに現れるものなのか。それはきっと、その人が、取捨選択を繰り返しながら、たどってきた人生にヒントがあるはず。
本連載では、スタイルがある人の生き方や考え方を取材することで、そのスタイルの裏側を分析。ときに、その人が生み出した「モノ」や「コト」にもフォーカスしながら、多くの人を惹きつけてやまない魅力に迫ります。
6月にUPし好評いただいた、「マディソンブルー」の中山まりこさんに続いてご登場いただくのは、ダンディな佇まいは業界一、AMARCでもファンの多いホリスティックコスメブランド「ニールズヤード レメディーズ」代表の梶原建二さん。ブランドを通して発信し続ける、美しい未来のための持続可能なウェルネスビューティ、その真価について紐解きます。
英国屈指のホリスティックコスメブランド
ニールズヤード レメディーズとの出会い

学生時代に、英国留学経験を通じてインスパイアされたのは、欧米ではあたりまえに存在する美しいデザインと機能性に優れた日用品の数々。梶原さんが見出したのは、“きれいなものは生活を豊かにする”ことだったそう。
1970年代、高度成長期の日本では、まだまだデザイン性に優れた美しい生活用品はハードルが高く。海外のイノベーティブで美しいもの、機能性に優れたものを日本に紹介したいという思いから、24歳で起業。「Filofax」や「HUBLOT」、「Dyson」など、様々な海外ブランドをいち早く日本に紹介し続けてきた経歴を持つ。じつは、その中のブランドのひとつが「ニールズヤード レメディーズ(以下、NYR)」だったという。
「ロンドンの中心部にあるコヴェントガーデンで、アポセカリーのようなショップをみつけ、衝撃を受けたことを覚えています。薬瓶を思わせるブルー一色で展開するブランドは初めて。創設者のロミー・フレイザーがホメオパシーやナチュロパシーのエキスパートだったこともあり、1981年の創業当時はニールズヤード アポセカリーというブランド名で、ミュージシャンやアーティストなど、感度の高いセレブたちの間で大人気。洗練と革新を併せ持つ、アヴァンギャルドでスタイリッシュな印象でした」
自然療法を嗜む人はいたものの、ヨーロッパ市場でも、オーガニックや精油にこだわるナチュラルコスメはまだまだ稀。まさに萌芽期とも言えるタイミングで、梶原さんがNYRに惹かれたのは、どんなところにあったのでしょうか。
「健康のためにビューティを提案するオーガニック、ナチュラルコスメは反主流の時代。胡散臭い(笑)印象さえもたれていたのですが、植物の血液とも言われる精油を化粧品に配合し、ウェルネスなナチュラルコスメを次世代に伝えていきたいと願うロミーの哲学に共感したことが大きいですね。また、製品を販売するだけでなく、ナチュロパシーやアロマセラピーの効果、理論を伝えるシステムを確立し、一般の方への普及や教育に情熱を注いでいたことも。人が生まれたときから生涯をとおして寄り添えるモノづくり、エデュケーション、美しさを健康としてとらえるブランドのDNAが、自分にぴったりあっていると思ったんです」

新製品を排出するよりロングセラーを
大切に育てるのがNYR流

ニールズヤード アポセカリーからニールズヤード レメディーズへ。英国ソイルアソシエーション、英国動物実験廃止連盟に加盟し、ヘルス&ビューティカンパニーとして進化を続けるNYR。2022年には日本上陸37年目を迎えるといいます。
「すでにロングセラー、ベストセラーがいくつかありますが、その筆頭に挙がるのがブランドを代表するフランキンセンスシリーズのナリシングクリームです。1983年に発表した稀少なフランキンセンス配合の保湿クリームで、現在でも看板商品として世界中で愛され続けています。また、アロマティック マッサージオイルやブレンドエッセンシャルオイル、ピローミストなどは、私自身も長年愛用しているロングセラーです。NYRのユニークな点は、日本主導で製品開発の提案ができること。ローズやゼラニウムなど女性性にフォーカスしたブレンドエッセンシャルオイルのウーマンズバランスは、日本で調香を提案したもので、今なおロングセラーを続けています」
この10年でオーガニックコスメ市場は急成長しましたが、ブランドの位置づけやユニークネスも広く浸透したのでしょうか。
「そうですね、老舗ブランドの中でもっとも質実剛健で真面目、保守的でありながらアヴァンギャルドな側面も持つ英国人気質のオーガニックブランドとして認知されるようになったと思います。私自身、これまで様々なブランドを日本に紹介してきましたが、人の健康と美しさを提供しながら、喜びや幸せを感じてもらえる、こんなに素晴らしい仕事はありません。自分にとっては、ビジネスの枠を超える存在だと思っています」
オーガニックをメインストリームへ。
NYR GREEN SQUAREが表参道にある理由

本国の厚い信頼を得て、日本のみ特例的な取り組みを次々と実現させてきた梶原さん。20年前には、スクールでの講座やサロン、ヴィーガンフードを提供するレストラン「BROWN RICE」を併設した表参道本店「NYR GREEN SQUARE」を建設。廃材やホルムアルデヒドフリーの塗料を採用、都内初となる電力資源を100%自然電力で賄うエコビルとしても有名です。
「店舗を増やし、規模を大きくすることより、教育や食を通じ、健康や環境、未来のことを考えるブランドの姿勢を理解してくださる人を増やしていきたい。その思いを具現化したのが「NYR GREEN SQUARE」です。なぜ、表参道に?って聞かれることも多いのですが、華やかな表舞台でオーガニックを提案するほうがスタイリッシュだと思ったんですね 」。
敷地内には風がそよぎ、鳥のさえずりまで聴こえてくる緑豊かな空間 。地下には4トンの貯水槽を所有、設計からデザイン、植樹選定やランドスケープまで梶原さん自らが手掛けたのだと言います。
「『NYR GREEN SQUARE』で伝えていきたいのが、食の大切さと、CO2排出量削減への意識でしょうか。日本人の成人病増加の根底にあるのが、食の質の低下。食べる栄養素は情報ですから、なるべくいい情報を体内に取り入れるべきだと思うんです。『Health is the next wealth』と言われるように、健康は誰もが持てる財産なのですから。同時にヴィーガンフードが、幸福感と直結する美味しいものであることを伝え、和食をリヴァイブさせたいとも思っています。そしてCO2排出削減をサポートしている意識も。『NYR GREEN SQUARE』では、通常よりCO2排出削減に貢献しています。環境問題を身近に感じはじめた若い世代をはじめ、多くの方に実感して欲しいですね」
いかがでしたか? 後編となる次回は、梶原さんがニールズヤード レメディーズを通じて取り組むSDGsやサステナビリティ、女性の社会進出問題など、私たちが直面する課題についても伺っていきます。
Photographs /Shungo Tanaka(MAETTICO)
Text / Sawako Abe
Edit /Ayako Suzuki(HRM)
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【SHOP INFOMATION】
今回お邪魔したのは
ニールズヤード レメディーズ
表参道本店

毎日をよりポシティブに、より豊かにするための「美・食・学」が体験できる。100%再生可能エネルギーを使用したエコビルで、ショップ、サロン、スクール、レストラン(BROWN RICE)が併設されている。
住所:
〒150-0001
東京都渋谷区神宮前5丁目1
電話番号:
ショップ 03-5778-3706
スクール 03-5778-3597
レストラン 03-5778-5416