6月10日(金)に発売された『AMARC magazine issue02』は、もうお手に取っていただけましたでしょうか? トラベルページでは、デジタル生活で忘れがちな“触れる感覚”を取り戻す、佐賀と長崎の旅を特集。その中に掲載したお宿の、誌面には載せきれなかったディテールやおすすめポイントを、担当エディターの山下美咲さんに教えていただきました。ぜひ、次の旅のヒントに!
【嬉野温泉】
和多屋別荘で味わえる、
老舗らしさとニューウェーブ
AMARC読者のみなさん、こんにちは! 佐賀&長崎旅のトラベルページを担当した、エディターの山下美咲です。偶然にも福岡出身の私は、誌面でご紹介したエリアをこれまで何度も訪れたことがあったのですが……。今回の取材では、そんな私も驚くほどの進化と癒しと発見がたくさんありました。
こちらは佐賀県の嬉野温泉にある「和多屋別荘」。創業から70年を超える老舗旅館で、約2万坪もの雄大な敷地を有しています。大草さんも何度もリピートしてステイなさっているとお聞きしましたが、それもそのはず、広大な敷地の中にいくつも棟があって、客室タイプも4種類あるそう。さらに日々リノベーションを繰り返しているから、飽きることがないんです。
数あるうちのひとつ、タワー棟の客室の一例がこちら↑。嬉野の温泉街に入るといちばん目立って見える、和多屋別荘のトレードマークであるタワー部分で、眺望も素晴らしい! 木の家具をアクセントに落ち着けるムードを漂わせつつ、ベッドやチェアが置いてある設えに。私には足の不自由な祖母がいるのですが、そんな親族と一緒の温泉トリップでも、ここなら心配も気兼ねもなく楽しめそう。
和風テイストな温泉郷エリアのお部屋はこのような感じ。本間は12畳と広く、さらに書斎スペースとこれまた広い縁側、そしてリバービューの半露天風呂が。縁側には美しいデザイナーズチェアが置かれていて、ここも和洋折衷で瀟洒なムード。木造の浴室には清々しいウッドの香りが漂っていました。お庭を眺めながらゴロゴロしていたら、あっという間に日が暮れてしまいそうです……。
ちなみに嬉野温泉のお湯は“日本三大美肌の湯”として知られている、弱アルカリ泉。基本的にはぬるめで、お肌をとことん甘やかしてくれます。そのpHバランスがたんぱく質を溶かすことから、温泉水で温めるトロトロの温泉湯豆腐が名物なんですよ。
和多屋別荘で特筆すべきは、館内を彩るスタイリッシュなショップたち。2021年11月にオープンしたばかりだそうで、モダンでハイセンスなセレクトが光ります。お茶の里として知られる嬉野らしく、地元の茶農園が運営する日本茶ショップ&バーや、旅館内の料亭でも使われている、400年もの歴史を誇る肥前吉田焼の器が買えるショップは必見。さらに、地産の調味料などをお土産にゲットできるショップも。また「Made in ピエール・エルメ」では、ここでしか味わえない嬉野茶マカロンを販売しているので、見逃すなかれ。
もうひとつ、リピートだけではなくて、長く滞在したくなる理由も。それがお茶を飲みながらくつろげる書店、「BOOKS&TEA 三服」です。約1万冊の書籍を自由に閲覧、購入できるそうで、中には歴史を感じられる貴重な古書の展示も。ブックコンシェルジュが常駐しており、気分やお好みに合わせて本をおすすめしてもらうことも可能なんだとか。じっくりゆっくり知的好奇心と向き合うひとときって、本当に貴重ですよね……。大草さんのご著書や『AMARC magazine issue02』も置いてあるので、訪れた際にはぜひチェックを!
これだけでも十分なのに、さらにアートまで楽しめてしまうのが、和多屋別荘のすごいところ。館内のいたるところに、雲や動物、魚をかたどったランタンや、美人画が飾られています。夜になるとランタンはライトアップされ、幽玄的な美しさを浮かびあがらせて……。敷地内の各所に点在しているので、湯上がりに浴衣でのんびり散歩しながら鑑賞するのもいいですね。
【和多屋別荘】
佐賀県嬉野市嬉野町下宿乙738
TEL:0954-42-0210
ホームページはこちらから
【武雄温泉】
自然もサウナもアートも。
話題の御船山楽園ホテルをチェック
さて、お次は武雄温泉へ。こちらもヴィヴィッドな刺激と癒しにあふれた魅力がいっぱいです。「御船山楽園ホテル」は、インタラクティブなクリエイションで知られるアート集団「チームラボ」のアートを館内の随所に備えたお宿。さらに昨今は、全国を対象としたサウナランキングの「サウナシュラン」で3年連続1位を獲得した大浴場が話題となり、予約が取りにくいことで有名なんです。
純和風と洋風の客室を揃えていますが、一番人気は上の写真のサウナ付きルーム。北欧テイストと和モダンが絶妙にミックスされたインテリアが新鮮に映ります。
大浴場にもサウナはあれど、さらにプライベートのものがお部屋についているなんて、サウナ好きにはたまらないですよね。コンパクトながら水風呂用の浴槽もきちんとあるなど、造りはしっかりしていて、心ゆくまで楽しめそう。
サウナの扉の脇に、蒸気を立たせるロウリュに使うためのほうじ茶を発見。熱した岩にザザッと注ぐと、なんとも香ばしいミストが立ちこめるのだそう! 香りのメディテーション効果もプラスされ、心身ともに極上の“ととのう”体験ができてしまうこと間違いなし。
館内には、チームラボによる常設展示が。かつての栄華を思わせる古い旅館の遺構と最新のアートが混在する空間は、感性をこれでもかというほど磨いてくれるはず。こちらの「廃墟の湯屋にあるメガリス」は、メガリス(塊)の表面に四季の花が咲いては散る、変化するアート。人の動きにも影響を受けながら、刻々と姿を変えていきます。
常設展示以外に、御船山の大自然をキャンバスにしたシーズナルな展示が7月15日(金)より今年も開催されるそう。会期中はさらに宿が埋まりやすくなるので、気になる人はお早めに!
【武雄温泉】
花鳥風月にどっぷり浸かる
大人の休日なら、御宿竹林亭へ
武雄の象徴として知られる御船山の麓に佇み、「御船山楽園ホテル」と同じ敷地内にありながら、よりラグジュアリーでオーセンティックな滞在が楽しめるのが「御宿 竹林亭(おんやど ちくりんてい)」。見てください、この絢爛たる玄関を! 手入れの行き届いた歴史ある建築と、細部にまで気配りの感じられる装飾や四季折々の植物が、ここだけ外界とは異なる時間の流れをつくりだしているような気すらします。
広大な敷地内に、客室はわずか11室。そのすべてが露天風呂付きなのだといい、ゆったりとした滞在が楽しめそう。とはいえ「御船山楽園ホテル」内のサウナ付き大浴場や、チームラボのアートにもアクセス可能なのもうれしいですね。この客室の磨きあげられたガラス窓から望む御船山の木々の様子は圧巻で、小さなお子さんは窓があることに気づかず外に出ようとしてコツン! と頭をぶつけてしまうこともあるほどだとか。どこまでも美しい自然と建築のハーモニーに、身を委ねてみてはいかがでしょう。
【御宿 竹林亭】
佐賀県武雄市武雄町大字武雄4100
TEL:0954-23-0210
ホームページはこちらから
佐賀のお宿、いかがでしたでしょうか? マガジンの誌面では温泉のお湯の柔らかさのほかにも、忘れていた野草のしなやかさや、モダンでおしゃれな陶器の触りごこちなど……日々の喧騒でないがしろになってしまいがちな触覚を呼び覚ますのに最適な、佐賀&長崎ならではのおすすめディスティネーションを多数ご紹介しました。ぜひぜひ、マガジンをお手にとってみていただけたらうれしいです!
「佐賀旅こぼれ話」シリーズ、次回は誌面で紹介できなかった佐賀のパワースポットについてレポートします。よかったらそちらもご覧くださいね!
PHOTOS / KAZUMASA KAWASAKI(SIGNO)
EDIT & TEXT / MISAKI YAMASHITA
profile
山下美咲
旅好きエディター。翻訳小説の編集を経たのち、モード誌にてビューティー、ファッションの世界へ。旅好きが高じて『AMARC magazine issue01』では最旬の東京ガイドを、そして今回は佐賀と長崎の「触れる旅」企画ページを担当。冒険心にあふれるアクティブさを貫きつつ、モードなおしゃれで装う旅スタイルを模索中。
Instagram: @mskymst