Blog大草直子の毎日AMARC
2週間ほどのヨーロッパ滞在の最終場所はパリでした。最初はディレクションをさせて頂いている、シーズンスタイルラボの買い付けで。その後、AMARCのファッション撮影をし、最後に、3シーズン目に入ったヴェルメイユ パー イエナの取材や撮影を。本当に盛りだくさんのステイだったな、と、遠い目になってしまいますね。
そのラストミッションであった取材で、30代から60代の、バックグラウンドもルーツも、もちろん体型や顔立ちも違う女性たちにお会いしました。夢をおいかけている途中の人。「パリの女は笑わないのよ」と言って、クールな横顔を見せてくれる人。本当にみんな、それぞれに違っていて、それぞれに素敵で。モデルを主役にしたファッションシュートも大好きなのですが、「ああ、人間って。女性って面白いな」と改めて感じたプロジェクトでした。
その中で、最も記憶に強く残っているのが、70歳近い、元建築家の女性。艶やかなシルバーヘアに、シャンブレーのシャツがとてもよくお似合いで。お父様が骨董屋で手に入れた、という、「鵜飼いをする老人」の置物を「日本のものよ」と見せてくださいました。シンプルで、「緊張感とリラクシングな空気が同居した」、まるで彼女自身のようなインテリアも本当に素敵。笑うとのぞくすきっぱな前歯もチャーミングで。
私達の企画を理解しようとしてくださる姿勢。
炎天下の中到着した私達を気遣い、心配してくださる優しさ。
白のブラウスのアンダーにキャミソールを着たほうが良い?と聞いてくださった品の良さ。
なんという美しい人だろう、と背筋が伸びる思いでした。
20代の美しさは眩しいほどに無防備で。30代のそれは、自信の上に立ち。40代は、華やかな大輪の花のよう。50代の美しさは、ユーモアが加わり、さらに年齢をレイヤードすると、件の60代のマダムのように。
私たちは、手のひらいっぱいの美しさを消費していくのではありません。こねて丸めて、まるで粘土のようにフォルムを整えていくのだと、心から安堵し、ますます目の前にある道のりが楽しみになりました。
女性の美しさ、その最終的な形は、色っぽさでも可愛らしさでもなく。「知性」なのだ――。これが、今回のパリが教えてくれたことでした。