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専業主婦から世界へ。森英恵さんはデザイナーとしてだけでなく、生き方としても私たちのロールモデルとして輝く方。アジア人で初めてパリ・オートクチュール正会員となり、日本のファッションを牽引した森英恵さんの没後初となる回顧展が、生誕100年を迎えた2026年春に国立新美術館にて開催されます。デザイナーとしての表現に加え、彼女の生き方に触れることは、これからの自分をより生き生きと輝かせるきっかけになる、またとない機会になるはず。ぜひ、足をお運びください。

1950年代にキャリアを開始した森英恵さんは、当初、映画衣装の制作を通じて頭角を現すように。戦後の高度経済成長期の日本において、家庭を持ちながらデザイナーとして社会的にも大きな仕事を成し遂げる姿は、新しい女性像の先駆けとして注目されるようになりました。そのような中で1961年、雑誌『装苑』にて新たに提唱したのが「ヴァイタル・タイプ」という人物像。快活で努力を惜しまないその姿は、森さんのその後の生き方とも大きく重なるものでした。
1965年にはニューヨークコレクションにデビューして以降、日本のみならず晩年まで世界を股にかけて活動を続けました。 本展はオートクチュールのドレス、資料、初公開となる作品を含む約400点を通じて、森英恵さんのものづくりの全貌を明らかにします。

「ヴァイタル・タイプ」とは、前述の通り森さんが1961年1月号の雑誌『装苑』で提唱した人物像で、まさに森英恵さん自身の姿とも重なるもの。1章では当時の取材記事を取り上げ、森さん自身が「アーティストであり、働く女性であり、妻であり、母である」という新しい女性イメージを牽引する存在だったこと、そうした姿を、洋服を作ることを通して創出していた様子を辿ります。また、森さん自身がこの時期に中心的に取り組み、その後の活動を軌道に乗せる大きなきっかけとなった映画衣装の仕事についても紹介します。

1960年に初めて訪れたパリ、ニューヨークに刺激を受け、世界に活躍の舞台を広げたいと考えた森さんは、日本の美意識について改めて知ろうと、日本美術・文学・そして日本の布地について自ら学び直しました。このときの研究成果をもとに、1965年に森はニューヨークで初となるコレクション「MIYABIYAKA(雅やか)」を発表。「East Meets West(東と西の出会い)」と報じられて好評を得、同地の高級百貨店での取り扱いが始まりました。また、すぐに雑誌『ヴォーグ』の名編集長ダイアナ・ヴリーランドがその才能に気づき、色鮮やかで美しい日本の布を生かした優美な表現を世界中に伝えたことで、森さんのその後の活躍が決定づけられました。
島根県立石見美術館所蔵の《イヴニングアンサンブル(ジャンプスーツ、カフタン「菊のパジャマドレス」)》 も写真家リチャード・アヴェドンによる撮影で『ヴォーグ』に大きく取り上げられ、アメリカ時代の森英恵の活躍を象徴する一作です。本章ではメトロポリタン美術館所蔵の作品を展示し、森さんのアメリカ時代の足跡に迫ります。




1966年、ファッションハウス森英恵では最新のファッション情報を紹介する媒体として『森英恵流行通信』を刊行。鋭い切り口と充実した特集記事が話題となり、1970年からは雑誌『流行通信』となって継続されました。
1976年には森英恵さんの長男が編集長を務め、サブカルチャー誌へと発展する『STUDIO VOICE』の制作を始め、さらにアメリカのファッション業界紙『WWD』も日本に導入。1978年には表参道のランドマークとなったハナヱ・モリビルを完成させます。ビルは森さんのショーを開催するほか、ファッションに敏感な人々の交流の場ともなりました。
1985年には現在も続くテレビ番組「ファッション通信」を開始するなど、森さんは多くのファッションメディアの立ち上げに関わってきた稀有なデザイナーだといえるでしょう。3章では自社の成長とともに、新たな情報メディアを立ち上げていくことで、日本のファッションに関する発信力向上に大きく貢献したハナヱ・モリグループの事業について焦点を当てます。



1977年、森さんはパリ・オートクチュール組合の正会員となり作品発表を始めます。これは日本に続きアメリカでの活躍も認められ、作品のオリジナリティやアーティストとしての社会的信用が評価されたことで実現した、アジア人初の快挙となりました。それまでの独自の色や柄を生かす作品に加え、パリではオートクチュールならではの素材や技巧をつくした作品作りに挑戦し、創作の幅を広げていきました。
4章では「刺す」「織る」「たたむ・重ねる」「墨絵」「花」「白と黒」「お嫁さん」など、技法や素材に注目したテーマを立て、1977年のデビューコレクションから、2004年のファイナルコレクションまでを網羅的に展覧します。

森英恵さんのクリエイションは多くのアーティストたちとの協業の中で生まれました。ここでは森さんを支え、その仕事を豊かにした松本弘子氏(モデル)、奈良原一高氏(写真家)、田中一光氏(グラフィックデザイナー)、岡田茉莉子氏(女優)、黒柳徹子氏(女優)、横尾忠則氏(美術家、グラフィックデザイナー)、佐藤しのぶ氏(オペラ歌手)らとの交流について、アーティスト本人所蔵の森さんの衣装や作品、資料を通じて紹介します。
その生き方に感銘を受ける森英恵さんの大回顧展。絶え間ない努力、光るセンス、自身の持つ最大限を活かして輝いたその姿を見ると、私たちもまだまだ……と思わざるを得ません。ヴァイタル・タイプに生きてみる──今からでも!

生誕100年 森英恵 ヴァイタル‧タイプ
◾️会期
2026年4月15日(水)~7月6日(月)
休館日:毎週火曜日(ただし、5月5日(火‧祝)は開館)
◾️開館時間
10:00~18:00
※毎週金‧土曜日は20:00まで
※入場は閉館の30分前まで
◾️会場
国立新美術館 企画展示室1E
〒106-8558 東京都港区六本木7-22-2
◾️観覧料(税込)
(前売券)一般:2,000円 大学生:1,600円 高校生:1,200円
(当日券)一般:2,200円 大学生:1,800円 高校生:1,400円
※中学生以下は入場無料
※障害者手帳をご持参の方(付添の方1名を含む)は入場無料
※4月17日(金)~19日(日)は高校生無料観覧日(学生証の提示が必要)
主催:国立新美術館、テレビ朝日、東京新聞
特別協力:森英恵事務所、一般財団法人森英恵ファッション文化財団
企画協力:島根県立石見美術館
展覧会公式ウェブサイト:https://www.nact.jp
お問い合わせ:050-5541-8600(ハローダイヤル)
text:Kumiko Takenaga