「着たい洋服」から、似合うヘアスタイルを逆引きする本企画。大草直子による「ショートボブ編」に続き、「セミロング編」もヘア&メイクアップアーティストの佐藤エイコさんのお力を借りてお届けします。
セミロング代表としてご登場いただくのは、雑誌『STORY』などで活躍されている、ライターの澁谷真紀子さん。まずは、澁谷さんの「着たい洋服、なりたい女性像」から導き出され完成した、新しいヘアスタイルをご紹介します。
年齢だけで諦めない!
ヘアスタイルで理想の自分を手に入れて

「本日はよろしくお願いします! 澁谷さんが着てみたい洋服や、目指す女性像を聞かせてください」(エイコさん)
「甘い洋服や、綺麗色のアイテムにチャレンジしたいです! ここ数年、ずっとベーシックな色やベーシックな形の洋服ばかり着ていました。でも、関西出身ということもあり、本当は甘いデザインや綺麗な色の洋服が大好きなんです。出産してからもずっと甘い洋服を着ていたのですが、40代前半くらいの頃、娘に『その服やばくない?』と言われてしまって……(笑)。その言葉をきっかけに、すっかり離れてしまいました」(澁谷さん)
「お気持ち、とても分かります! 第3者の言葉で気づかされること、ありますよね。そして大体はその意見が的を射ている。私は高校生の時、前髪は眉毛の上の長さで、後ろはロングヘアでした。20代になり、出産してからもずっとその髪型をしていたら、ある時友人に『まだ高校生の時と同じヘアスタイルをしてるの?!』って。その時に、年齢を重ねるに連れて、アップデートをしなくちゃ! と気づかされました。」(エイコさん)

「そうですよね。私は出産後ずっとボブで、伸ばしたのは最近なんです。ベーシックな洋服には、セミロングくらいの方が似合うかなと思って。でも実際は、朝スタイリングする時間もなくてずっと結んでばかり。髪の毛の痩せ具合も気になって、ついつい結んでしまうんです。ヘアスタイルで全体の印象も大きく変わる、ということはわかっているのですが、洋服のコーディネートによって変えるとか、季節によって変える、ということもしていなかった」(澁谷さん)
「大人のヘアのお悩み、とてもよくわかります。髪の毛のボリュームが少ない人は、ボブやショートにした方がまとまりやすくなります。それでも女っぽさが欲しい、ロングにしたい、というのであれば、それなりの手間は必要。シャンプーやコンディショナーをボリュームアップ用のものに変えるなど土台から気をつけたり、スタイリング剤をうまく使ったり」(エイコさん)
「そうそう! パサつきも気になるので、オイルを使ってみたら、余計にボリュームがなくなってしまったことも。何か気をつける点があれば教えてください!」(澁谷さん)

「いくつかポイントはあります。例えば、コンディショナーは毛先と表面だけに塗布すること。全体に使いすぎると髪がペタンとしてしまいます。ブローやストレートアイロンをする時も、全部をやろうとしないで表面だけ。オイルは後ほど紹介しますが、重いテクスチャーでウェットな質感を作るものより、髪の毛をしっとりとさせてくれるものがおすすめ。ところで、もう一度甘い洋服を着てみたい! と思ったきっかけはあるのですか?」(エイコさん)
「私、韓国ドラマにハマっていて。その中でも『愛の不時着』が大好きなんです。主人公のユン・セリ役のソン・イェジンさんが、役中で甘いブラウスをたくさん着ていて、大人でもこういう洋服を着ていいんだ! と。年齢を重ねるに連れて、諦めなければならないアイテムだと思っていたんです。でも、甘いブラウスは今の流行でもあるし、このドラマをきっかけにチャレンジしてみたいなって」(澁谷さん)
「愛の不時着、私も大好き! ユン・セリの洋服そしてヘアスタイルも、とても素敵ですよね。そうしたら、今回のテーマは『大人でも似合う韓国風ヘアスタイル』にしましょう! 韓国のヘアスタイルは、今っぽさを作る上でのヒントがたくさん。澁谷さんの今のヘアスタイルに少し手を加えるだけで、ガラッと印象が変わりますよ」(エイコさん)
「韓国風ヘアスタイル! ユン・セリのあの女っぽさに憧れていたので、とても嬉しい! 楽しみです」(澁谷さん)
\NEW ヘアスタイルが完成/
BEFORE

全体的にレイヤーが入ったヘアスタイル。前髪は、時間がない朝でも手を掛けず横流しにできるよう、長く伸ばしていました。澁谷さんのリクエストは、「甘い洋服や、カラーアイテム」にトライしたい、ということに加え、以下の2つ。
✔︎ 髪の毛がボリュームアップして見えるようなヘアスタイル
✔︎ 時間がない朝でもすぐにキマる
年齢を重ねるにつれ、髪の毛が細くなってきて全体的にボリュームがないことが悩み、という澁谷さん。髪を巻いたりせず何もしないまま出かけると、夕方にはペタンとしてしまい結局は髪を結んでしまう、とのこと。もう結んでばかりのヘアスタイルから卒業したい! という想いから、「髪の毛の細さが気にならず、ボリュームアップして見えるようなヘアスタイル」というのが1つ目のリクエストです。2つ目は、「時間がない朝でもすぐにキマる」ということ。仕事の日の朝は、どうしても巻いたりする時間がなく、一つに結んでしまうとのこと。洋服とのバランスを考える、ということもなくずっと一つにまとめていたので、時間を掛けずに、ダウンスタイルも楽しめる髪型にしていただきたい、とのことでした。
AFTER

全体のレングスは変えず、フェイスラインの印象を変えました。具体的なポイントは2つ。
まずは、耳前のもみあげ部分を短くカットすること。韓国のヘアスタイルでは、このフェイスラインを縁取る毛を残していることが多いのだそう。そうすることで、結んだ時にもニュアンスができて、一気にこなれ感が出るのだとか。大人が気になるフェイスラインを隠してくれる効果もあります。部分的に短くしているので、ダウンスタイルでは他の髪の毛と馴染み、変に目立つこともありません。
2つ目のポイントは、センター分けにして、長めのシアーな前髪を作ること。若い時に作っていた前髪も、年齢を重ねると敬遠してしまうもの。前髪の有り無しで印象は大きく変わるので、今までの自分からアップデートをするためにも思い切ってトライしてみよう! とエイコさんは言います。少し長めにすることで、大人っぽい印象になるのだとか。
時間がない朝でもこのフェイスラインに手を加えるだけで、ダウンスタイル、そしてアップスタイルも、途端におしゃれな印象へと変わります!
>>EIKO’S ADVICE
シアーな前髪のスタイリングはスタイリングが難しそう、と感じる方もいらっしゃいますよね。そこで、エイコさんがカットとセットのコツを教えてくださいました!
■カットをする時には、サイドの髪の毛とつながらないように、極端に前髪だけ薄くするよう、美容師さんに伝えること。そうすると、前髪だけ簡単に取り分けることができ、スタイリングがしやすくなります。
■日々のスタイリングでは、メイクをする前に前髪だけカーラーで巻きます(マジックカーラーでOK)。熱を当てず、空巻きのままキープ。その間にメイクをすれば、メイクが終わった頃には、緩いカールが完成! 熱を当てるとカールが強くなってしまうので、空巻きをするのがコツなのだとか。これなら忙しい朝でもトライできそうですね。
いかがでしたか? フェイスラインに手を加えるだけで、途端に今っぽいヘアスタイルに変わりましたね。次回は、明日、5月12日(水)に公開予定。新しい髪型で澁谷さんがトライしたかった「大人の“甘”スタイル 」をお届けします。お楽しみに!
Photograph /Shungo Tanaka(MAETTICO)
Hair&Make-up/Eiko Sato(ilumini)
Text / Manami Sato
Edit /Ayako Suzuki