Life style 私と人生、「5つのマイルストーン」
人生には無数の選択肢があり、その一つひとつを選び続けて今がある。そして、ふと来た道を振り返ると、いくつかの節目(マイルストーン)があることに気づくだろう。さまざまなフィールドでキャリアを重ねてきた、歩みを止めない大人たちの物語──。

凛とした佇まいが印象的な、ジャーナリストの安藤優子さん。大学時代にテレビ局のプロデューサーにスカウトされて報道番組のキャスターやレポーターとして活躍。以来、約40年にわたって報道の現場に身を置いた。現在は大学の教壇に立ち、テレビ出演や講演活動などで多忙な日々を送っている。
安藤さんと30年もの付き合いになるのが、元フジテレビアナウンサーで、現在はフリーで活躍する木佐彩子さん。1996年に『ニュースJAPAN』で共演して以来、親交を深めてきた。前編では、木佐さんを聞き役に、安藤さんの人生を大きく動かした3つのマイルストーンをたどる。
安藤優子(あんどう・ゆうこ)
キャスター/ジャーナリスト。1958年、千葉県生まれ。1980年からテレビの報道番組に携わり、要人インタビューをはじめ国内外で豊富な取材経験を持つ。2026年4月より法政大学キャリアデザイン学部兼任講師に。夫と愛犬・タンゴの2人+1匹暮らし。
Instagram @yukoando0203
聞き手:木佐彩子(きさ・あやこ)
フリーアナウンサー。1971年、東京都生まれ。小学2年~中学2年までアメリカ・ロサンゼルスで過ごす。フジテレビアナウンサーを経て独立。情報・報道番組を中心に活躍。安藤さんとは30年来の親友。
Instagram @ayako_kisa

安藤「1つ目のマイルストーンはやっぱり、高校時代に留学した時のことですね」
高校2年の夏休み、校内選考を経て、交換留学生としてミシガン州の公立高校に行くことになった安藤さん。留学したいと思うようになったきっかけは、さまざまな人が書いた「留学記」を読んだことだった。中でも印象に残ったのが、松島トモ子さんの留学記『ニューヨークひとりぼっち』だった。
安藤「その本に『バナナスプリット(縦半分に割ったバナナの上にアイスクリームや生クリームなどでデコレーションしたアメリカの伝統的なスイーツ)』が出てくるのですが、松島さんは発音が悪くて注文できなかったんです。とにかく私もアメリカで『バナナスプリット』を食べてみたかった。あとは、アメリカの暮らしにも憧れがありました。ドラマ『名犬ラッシー』に出てくるママは冬でも半袖のワンピースにハイヒール姿。セントラルヒーティングだから寒くないんです。それに比べて日本の私の家は、部屋はストーブで暖かくても、廊下やトイレは極寒。アメリカってなんて豊かな国なんだろう、自分も経験してみたい、という気持ちでいっぱいになりました」
英語の習得よりも、アメリカの文化に身を置いてみたい! という憧れから始まった留学。自分では英語ができるほうだと思っていた安藤さんだが、行きの機内でCAに「あの娘は英語がしゃべれない!」と言われてショックを受ける。現地では7人兄弟がいる一家にホームステイし、ホストファミリーの子どもたちとの会話で英会話力が鍛えられていったという。
安藤「特に、7歳のアンディは容赦がなくて、何度も『ユウコの英語はわからない!』と言われました(笑)。始めは大変でしたが、2か月くらいしたら、ある日突然、英語で夢を見るようになりました」

アメリカに到着して3日目のこと。ホストマザーが安藤さんを、部活動中のテニス部の監督に引き合わせた。そしていきなり、「ユウコはプロ並みにテニスがうまいの。テニス部にこの娘を入れなければ、あなたの損失よ!」と熱弁を振るった。
木佐「アメリカ人って、何でもすぐ盛るから!」
安藤「私は、高校でテニス部に入ったのですが、1年は球拾いばかり。そんな状態だからテニスなんて全然できないのに、マザーが盛るからびっくりして! 案の定、監督の指示でコートに入ったけれど全く打てませんでした。だから、帰りの車でマザーに『私、テニスがうまいなんて一言も言ってないよね? なんであんな嘘をついたの?』と猛抗議しました」

そこでマザーに、「ここではね、自分から声をあげなければ、あなたはいないも同然だから」と告げられた。
安藤「日本にいると、誰かが気配を察知して、『これ食べる?』と食べ物を持ってきてくれたりしますが、アメリカでは、自分で『食べたい』と言わないと、食べ物は出てきません。常にどうしたいかを問われ続けるんです。私が何も言わなければ、誰かが気を利かせて何かをしてくれるなんてことはない。留学早々、ホストマザーにこの言葉を言われたことは大きかったですね」
▶︎ 次ページ
大学在学中に報道番組に出演。海外取材にも抜擢され……